わたしたちの住む街
わたしは「君の住む街」に関わるうた好きだ。
そこには、その人の生い立ちや歴史がある気がするから。
その人にしかわからない情景があるから。
街並みに、建物に、物に、思い出が宿るから。
また、うたでは、それらをひっくるめて大切にしてくれているような気がするから。
わたしも、18歳まで過ごした地元、
大学進学を機に初めて過ごした寮生活、
寮を出て、上京してきた兄とのふたり暮らし、
就職した街でのひとり暮らし、
東京を少し離れての彼とのふたり暮らし、
生活に合わせた5つの街での暮らしがあって、
そのどれを切り取っても愛着がある。
その街や駅の名前を聞けば身を乗り出す。
また、大学生だったからこその過ごし方もあって、
「今だったらもっと満喫できるのに」「もっといろんなお店にいけばよかった」
なんて気持ちも含めて、わたしのその街との思い出なのだと思う。
2021年の夏、東京オリンピックを横目に、6つめの「わたしの街」を迎える。
そしてこれが最後の引越しになるかもしれない。
そして、地元よりも長く過ごす街になるかもしれない。
引越しを決意したのは、夫からの提案。
コロナ禍でリモートが増えてきたことから、
前から憧れがあったマイホームを検討し出したの。
また、世間でもよく聞く「都心近くに家がある必要がなくなったから」というやつである。
マイホームを構えるにあたって、予算の都合から離れるしかなかったことも当然あるのだけれど、ふたりの希望である「一軒家」「庭がある家」「BBQができる環境」「できるこもなら大型犬を飼える家」という項目がやむを得なくした結果である。
今のアパートも街も大好きだったので、ここで子育てをするのかもしれない、その子が大きくなって手狭になった頃、マイホームへの憧れが募るかもしれない。
なんて思っていたけど、順番が逆になった。
それに伴い仕事も変えることになった。
頭の中で描いていたライフプランから急に変更になったことで戸惑いはあったけども、ふたりで話しあい、納得した選択できた。
それから、子どもがいない暮らしも、イメージしながら過ごすようにしている。
子どもを基準としたらライフプランだけでなく、さまざまなことがらに対応きる柔軟性と選択肢を増やしていきたいと思う。
わたしの周りには子どものいない生活をしている夫婦が予想以上に多く、いろんな生活のモデルがあるのはありがたいことだと思う。
次の「わたしたちの住む街」は、
わたしの出身県のとある街。
地元の市からは車で40分程度?
近所ではないけど遠くはない。
世間で言う「Jターン」にあたるらしい。
この街を選んだのは、
わたしたちのしたい生活を実現できるかつ、
夫がたまにある出勤日にぎりぎり通えるライン。
そのふたつを叶えられる地域の候補のなかから
「せっかくなら地元に近いところを」
という理由。
だから、「わたしたちのしたい生活、住みたい街」が先で、そのあとに「わたしの実家が近い」がついてきている。
このポイントが、実はわたしはとっっても嬉しい。
「奥さんの実家の近くにしたのね」
「ご両親も喜ぶね」
「子育ても助かるね」
それらの意見もすべてすべて、その通りだし
わたしのなかでの嬉しいポイントであることは間違いなくて。
ふたりで選んだ街であること、
わたしのための街ではないこと。
これが根底にあることでしっかり立っていれる気がする。
その気持ちも、大切にしまっておきたいなぁと思ったのである。
わたしは地元に戻るという願いは無かったし、
結婚して新しい地域に移り住むことも受け入れていた。
なんならどこにでもいくし、どこででも新しい生活ができる自負さえあった。
そんななかでの思いがけない「地元に戻る」選択に、
思っていた以上に嬉しい自分もいた。
両親もきっと同じで。
ただ、手放しに喜ぶだけでなく、前述した選んだ経緯に、安心もしたのかななんても思う。
実家が近いということは、結果的に夫も助けられるかもしれない。
義両親がわたしの両親に「息子とは距離があるので、近くにいらっしゃるのはとても心強い」と話していたこともある。
ありがたいことだなぁ。
義両親にとっては「息子が地元に帰らない」ということが決まったということだ。
だからこそ、長期休暇には夫の地元に帰るようにしたいし、距離がある分のコミュニケーションは丁寧にとりたい。図々しいくらいに頼れるところは頼っていきたいなぁと思う。
ありがたいことだなぁ。
きっと、子育てをしたら、わたしも、
「奥さんの実家に近いといいよ」なんて受け売りをすると思う。
だけど、根底にある、「この街を選んだ理由」は大切に大切に、とっておきたいと思う。
そして、他の人のにもきっとある「大切にしまった理由」に思いを馳せられるようでいたい。
そして、「奥さんの実家近くになんていいご主人だね」と言われる時にはあえて大切にしまったまま、夫の顔をここぞとばかりに立てておこうと思う。